漫画においての「間(ま)」はおもてなしの工夫
今回は、漫画においての「間(ま)」について持論を書かせていただきます。
最近漫画を描き始めたという人や、そういうのは気にしないという人にはちょっとだけ小難しい内容かもしれません。
「間(ま)」
そもそも「間」 という言葉、お笑い好きな人からすれば結構聞く言葉ではないでしょうか?
お笑い芸人さんがよく使いますよね。
あとは一般的にも「間が悪い(又は良い)」といったことを聞くことがあります。
間…空気、タイミングといった感覚でしょうか。
僕は漫画においての「間」というのは、お笑いや他のエンタメ同様にとても重要なことだと思っています。極論、世の中は「間」が全てではないか?とすら思っています。
読者のスピードコントロール
音声、又は音声込みの映像で楽しむ他の多くのエンタメと比べると
【読み物の一種である漫画】においての「間」というのは読者の個人差でもかなり変わってくると考えます。
みなさん漫画は個人個人好きなスピードで読みますよね?好きなタイミングで次のコマに行ったり、次のページをめくったりすると思います。
そんな読者次第で変化する「間」ですが、描き手の工夫次第で100パーセントではなくとも、「間」を練って描くことで、ある程度の設定・テンポのコントロールはできると思います。僕は下手なのでよくわかりませんが、もしかしたら上手な人は読むスピード自体も完璧にコントロールできるのかもしれません。
もちろん個人差として独特のテンポで漫画を読む人には通用しないことがあるかもしれません。
独りよがりよりおもてなし
テンポが良い漫画はスムーズに読めます。そこに絵がちゃんと伝われば読者の頭の中に「?」がつくことはありません。
今のどういうこと??
このコマとコマの間の経過がよくわからなかった。
ページをめくったはいいけど、変な感じがしてさっきのページと繋がっているように思えなかった。
等々…
「?」が多いと読者は読むのをやめてしまいます。
そこにはきっと描き手さんから読者さんへのサービス精神、おもてなしの工夫があると思います。
つまり独りよがり、自己中心的な考え方ではなく、見せ方において客観視ができるのだと思います。
これも演出するということなのかもしれません。
プロの人のことは当たり前なので別として、他の人に「伝わりにくい」「わからない」と言われてしまう人はそのおもてなしの工夫が足りないのだと思います。
これは「間」だけの話ではありませんが、とりあえず今回は「間」について書いていきます。
どうして「間」にこだわりがあるのか
そもそも僕がなぜ「間」にこだわりを持つようになったのか、それは自分の好きなプロの漫画は全て共通して「間」が天才的に良いことに気付いたからです。
特にギャグははっきりしていました。僕が本格的にギャグ漫画を描こうと決めた時期に、手元にあった好きなギャグ漫画は「間」を駆使して笑わせてくれる作品が多かったのです。
二次元の中での流れを細かくも大雑把にも自由自在に切り取れる「コマ割り」や「カメラワーク」「セリフの妙」といった部分に作者さんがこだわりを持って描いているような漫画を尊敬しました。
自分も「間」や「テンポ」を駆使したギャグ漫画を描ける人になりたいと考えました。
セリフがあるものもセリフが全くないサイレントものも、「間」を気にして描くようになりました。
うまくいかないことも多々あります。今もたくさんあります。
学生時代、漫画専門学校の講師の先生や持ち込みに行った時の編集さんたちには「間」や「テンポ」を褒めてもらえました。
ある講師の先生が言いました。
「プロはみんな圧倒的なこだわりというか、狂気という武器を持っている。君のは狂気が少しあるね。これからもそういうのを大事にして描きましょう」
漫画において自分の好きな漫画の好きな部分、自分のこだわり、評価、がようやく一致した気がしました。武器誕生の気配です。
そして、ある大きな賞の佳作をいただけた時にそれは確信になりました。
他人からの評価
ちょっと今回名前は伏せさせてもらいますが、僕が受賞した賞の審査員の先生(その雑誌の連載作家)のコメントに「アクションが元気でテンポが良かった」と書かれていました。
賞の授賞式でいただけた冊子にそのコメントが載っていました。
もちろん他にもダメ出しやアドバイスの評価コメントはありました。
特に僕は設定や発想はいいけどキャラで引っ張っていくようにしよう!ということを担当編集さん審査員や講師の先生たちから共通して言われていました。
みんなはできるだけキャラクターから考えましょう!
こだわって描いてきた「テンポ」を褒めてもらえたことでやっと一つの武器と自分でも思えるようになりました。
「テンポ」は「間」の工夫と直結していると思います。
当時の担当編集さんからは勿論「テンポ」以外の他の部分についても褒めてもらえたり指摘されたりしてきました。
だいたいは、褒め1:9ダメ出しです。
そんな担当さんと出会う前から僕がこだわっていて実際評価された部分は「テンポの良さ」だけです。このまま「間」にこだわることを自分の狂気・武器として磨いていってみよう!大切にしていこう!と思えたきっかけをくれた専門学校時代の講師の先生には今でも本当に感謝しています。
読む時は気にしないでが本音
漫画って本当に奥が深くて、実はフキダシの位置が一ミリ違うだけで読者に与える「間」の印象=読む「テンポ」が変わってきます。
しかし僕の描くものは基本的にはギャグ漫画なので、自分の作品はそんなことを気にせず読んでもらいたいのが本音です。
漫画を描かない人に読んでもらう場合は当然ですが、漫画描きさんに対してもそう思っていたりします。
これからもくだらないものを作っていくので難しいことは考えずに、刺さった人たちだけにでもくだらね〜!って笑ってもらえたらこれ幸いです。
今はもう他の漫画描きさんに面と向かってアドバイスしたりすることを仕事にしていませんので、自分の原稿について具体的にどこをどう考えて作ったとかを書いてしまったら漫画を描かない人が読む時に冷める場合があるでしょう?趣味ではありますがこれからも漫画は描いていきますので、ちょっとそういう自分の作品に対しての工夫に具体的に突っ込んだ内容を書くのは今はやめておきます。
だからこれからも気にせず読んでくださいね。
頭を使って「?」を減らす
本音がそれなのになぜ「間」について書いたかと言いますと、自分が他の人(漫画家志望の人や趣味の人含む)の原稿を添削させていただく機会が過去に何度かあった中で、もう少し「テンポ」や「間」についてちゃんと考えて描いたらすごく良くなるし「?」が取れるのになぁ〜という作品が何本もあったからです。
ストーリーでもギャグでもその他でも、どうにも担当さんが付かない〜という漫画家志望さんは、独りよがりから脱却する為にも一度「間」について考えてみたり、自分の作品世界に訪問していただく読者へのおもてなし精神としてもっと自分の原稿を客観視してみてもいいのではないでしょうか?
偉そうに聞こえたらほんとにすみません。
『一に間、二に間、三四も間』
今回は自分のこだわりでもある「間」について書いてみました。
僕も色々な面で自分の漫画がうまくいかないことも多いですが、漫画を本格的に描き始めてから約15年。これからも『一に間、二に間、三四も間』ということで、「間」を大切にしていきたいと思います。
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